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残業時間を削減するには  -変形労働時間制等による残業時間の削減及び労働時間の適正化ー

本来残業は、正社員であれば上司の業務命令により行うことが基本ですが、時間外労働が常態化している場合の多くは、個人の裁量に委ねられ、個人個人の業務量が把握されないままに、暗黙の了解のもとに行われていることがあるかと思います。また、会社も社員も双方が、時間外労働による賃金を生活給の一部との認識から残業が常態化している場合もあると思います。

時間外労働をする要因はいくつかあると思いますが、例えば、現場トラブル発生による残業は、「トラブルが発生したのだから仕方がない」で終わっていないでしょうか。トラブルを起こさない、あるいは最小限にする業務改善をしているでしょうか。また、業務量が多いので残業をするのは、その社員の業務遂行能力が低いからなのか、適正に人材配置がされていないからなのかといった要因を検証して対策を講じる必要があります。

残業時間を削減して労働時間の適正化をはかるには、現状を分析し、1年単位変形労働時間制の導入や有給休暇の計画的付与といったテクニカルな対策も必要ですが、「長時間仕事をする=よく働いてくれる」ではなく、「工夫して仕事をする=よく働いてくれる」となるよう全社一丸となって業務改革・意識改革に取り組むことが必要ではないでしょうか。

それでは、次のとおり6つの削減方法について解説していきます。

関連するページ
  1. 割増賃金
  2. 変形労働時間制における残業時間の
    計算方法 
  3. 時間外労働の限度基準
  4. 1年単位変形労働時間制の基本事項
  5. 1ヶ月単位変形労働時間制の基本事項
  1. 変形労働時間制による残業時間の削減
  2. 有給休暇の計画的付与による残業時間の削減
  3. 残業申請・承認制度を導入して残業時間を削減する
  4. 半日有給休暇の取得制度を導入して残業時間を削減する
  5. 振替休日制度を規定して残業時間を削減する
  6. 事業場外みなし労働時間制による残業時間の削減



1.変形労働時間制による残業時間の削減

時間外労働を削減する有効な手段の1つとして、業務の繁閑の差を利用する労働時間の管理方法があります。月初や月末に明らかに忙しくなることがあらかじめわかっている場合や、毎年必ず8月に向かって忙しくなる場合などは、前者は1ヶ月単位の変形労働時間制、後者は1年単位の変形労働時間制にした方が、従業員側は暇な時期は早く帰ることができ、経営者側は残業時間の削減効果を期待できます。

図1

図1の報告書は、X事業所が所定労働時間が8時間の完全週休2日制から1ヶ月単位の変形労働時間制へ移行した場合の結果報告書です。この例では4月から6月までの3ヶ月間の社員「山田太郎」さんの出勤簿データを使ってシミュレーションを行っています。この事業所では、月末の5日間が繁忙であったため、その5日間の所定労働時間を9時間とし、それ以外の日を7時間30分としました。それでも週平均労働時間が40時間以内(特例措置対象事業場は44時間)とならなかったので、休日数を増やしたり、月初がさらに暇であれば所定労働時間を7時間に減らすといった調整を行いました。その結果、4月の所定労働日数は21日から22日とされ、所定労働時間は168時間から171時間とされました。

それでは、4月に着目してみましょう。こちら(各月の状況)をクリックしてください。この会社では月末締めの翌月10日払いのため4月度(図2)は賃金計算期間が3/1から3/31となります。3日の実働時間は8時間ですが、所定労働時間を8時間から7時間としたため、法定内残業が1時間発生することになります。また、6日の実働時間も8時間ですが、所定労働時間を8時間から7時間30分としたため、法定内残業が30分発生することになります。このように所定労働時間が8時間で実働時間も同じの日、言い換えれば定時退社した日については、自然減もしくはわずかな業務効率の向上により、30分や1時間の増加分を解消できるのではないかと考えられます。この時間数を図1の努力削減時間(①)と定義して、集計しました。

一方、図4の10日のように所定休日から就業日となった場合は、その日休出していなければ所定労働時間(この日の場合は7時間30分)分は余剰の労働力分であり、これを図1の余剰時間(②)と定義して、集計しました。

図2で繁忙期である月末5日間に着目すると、所定労働時間が9時間となったこと及び休出でなくなったことにより法定内残業で8時間、法定外残業で3時間、休日労働時間で9時間が削減されています。変形労働時間制への移行による効果が確かに伺われます。

ここで、図1に戻りますが、時間外等合計額(残業、休日、深夜などの変動賃金)の差額という項目に表示されている金額は、純粋に過去の出勤簿データを変形労働時間制を採用したと仮定して再計算した結果、削減されていれば、その削減額がマイナス表示されます。4月度では、16,428円の削減となっています。これに先ほど説明しました努力削減時間を加味すると37,518円の削減効果が期待できることになります。6月度では、23,587円の削減となっています。これに努力削減時間を加味すると35,794円の削減効果が期待できることになります。さらに余剰時間を加味すると52,447円の削減効果が期待できることになります。

2.有給休暇の計画的付与による残業時間の削減

有給休暇は権利を取得した社員が取りたいと言えば、原則取得させなければなりません。事業の正常な運営を妨げる場合等に、取得する時季を変更してもらうことは可能です。社員が自主的に暇な週に取得してくれれは良いのですが、逆に有給休暇を取得した週に休出したり、長時間の残業をするといったこと、あるいは取得日に他の社員が残業せざるを得ないといったことが多々あると思います。そういったことでも残業代は増えていってしまいます。だからといって与えないのは法律違反となってしまいます。

そこで有給休暇の大半を決められた日や期間に取得してもらえば、有給休暇の取得による残業代を削減することが可能になります。社員が自由に取得できる日を制限しようということです。これを有給休暇の計画的付与といいます。有給休暇の計画的付与制度の導入には、一定のルールがあります。それについては労務管理の基礎知識(有給休暇の計画的付与)を参照してください。

下記の表では、社員の山田太郎さんが7月21日に有休休暇を取得し、同一週に7時間30分の休出労働をしていることがわかります。さらに、同一部署で4時間30分の残業時間が発生しています。山田太郎さんの部署では、当該月に1日平均3時間の残業時間が行われていることからすると、1時間30分余分に残業時間が発生していることが読み取れます。この例では1社員の1回の有給休暇の取得についての分析ですが、これを一定人数でサンプル調査することで、計画的付与制度の導入が有効であるかどうかを判断することができます。




3.残業申請・承認制度を導入して残業時間を削減する

最も即効性のある残業時間の削減方法としては、従業員が残業をする際必ず申請の手続きを行うことを義務付ける残業申請制度を導入する方法です。これならすぐにでも始められます。業務日報があるのなら、それにいくつか項目を追加すればよいと思います。残業を行う業務上の理由、業務内容、予定残業時間数の3つ程度で十分だと思います。残業申請書は直属の管理職に提出し、承認されれば残業を行い、業務終了時に確定残業時間数を記入させます。

もう1つ大切なことは、残業時間とその内容を会社が評価の対象としていることを従業員に周知することです。予定と確定の時間数に大きな乖離が見られる場合は、改善するように指導することも重要です。また、業務単位に会社側では標準労働時間数を設定し、従業員には目標労働時間数を設定させることでも残業時間の削減効果が得られると思います。

4.半日有給休暇の取得制度を導入して残業時間を削減する

従業員の方は、様々な理由で有給休暇を取得すると思いますが、誰かが1日休めばその分、誰かが埋め合わせをすることもあります。つまり残業代が余分に発生することになります。 数時間の要件でも1日分の有給休暇を取得することもあるかと思います。そんなときに、半日有休が取得できれば、大きくはありませんが時間外労働の削減に結び付くと思います。

導入にあたっての注意事項としては、半日有休を取得した日は、残りの所定労働時間はきっちり労働させることです。また、残業も原則禁止とすることです。

5.振替休日制度を規定して残業時間を削減する

休日労働には法定休日に労働する場合と会社指定の所定休日に労働する場合の2種類がありますが、特に法定休日に労働させてしまうと、3割5分以上の割増賃金が発生してしまい、その日の賃金額は通常の1.35倍と会社としては重い負担となります。そこで、法定休日に労働した場合にはあらかじめ就業規則で同一週の特定の日に休日を振替える規定を設けておくことで、その日は労働日となり、休日割増賃金の発生を抑えることができます。代休の場合は、あくまでも法定休日労働の代替休暇であって、休日労働をさせたことには変わりありません。代休日の賃金が控除できるだけであって、休日労働時間と代休日の所定労働時間が同じであれば、休日労働時間数×時間単価×休日割増率(3割5部以上)の支払は発生することになります。


6.事業場外みなし労働時間制による残業時間の削減

業務のほとんどを事業場外で行い、その日の業務内容や時間配分の決定が各自に委ねられている場合に、採用することができます。主には、営業マンや取材業務に従事する方などが対象となります。営業といっても、あらかじめ営業ルートがきめられていて、携帯電話等で連絡、指示を受けるような場合は、
当てはまりません。会社がその社員が実際に労働した時間を把握することが困難で、労働時間の管理(グループで行動し、その中に管理する人がいる場合はNG)ができないことも必要です。実際に導入する場合は、事業場外で労働した場合の当該業務に通常必要とされる労働時間を労使協定で定めます。この時間が8時間以内であれば労基署への届出は不要です。

例1
1日の所定労働時間  協定で定める当該業務に通常必要とされる労働時間
 7時間30分(9時~17時30分 休憩1時間)  7時間

例1では、9時から事業場外で営業活動し、18時に帰社して内勤を1時間して19時に退社しました。通常であれば、法定内残業が30分、法定外残業が1時間発生します。しかし、この場合は事業場外では7時間労働したとみなされるので、18時の時点で7時間の労働となり、結果としては法定内残業が30分のみ発生することになります。

例2
1日の所定労働時間   協定で定める当該業務に通常必要とされる労働時間 
 7時間30分(9時~17時30分 休憩1時間)   8時間30分 

例2では、9時から事業場外で営業活動し、20時に帰社して内勤を1時間して21時に退社しました。通常であれば、法定内残業が30分、法定外残業が2時間発生しますが、この場合は事業場外は9時間労働したとみなされるので、20時の時点で8時間30分のみなし労働となり、結果としては法定外残業が1時間30分のみ発生することになります。

このように残業時間の削減効果は期待できますが、どの程度の労働時間を協定するかが難しいところであります。



 
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