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就業規則の作成と運用指導

個別労働紛争等の労使トラブルを未然に防ぎ、労使ともに健全な経営活動を日々遂行していくためには、その時代の法令・判例と企業実態にマッチした就業規則が整備されていること、そして継続的に正しく運用していく必要があります。このことは問題のある従業員を適正に指導または排除し、一生懸命に働いてくれる従業員や成果を上げてくれる従業員に報いるためにも必要なことです。

就業規則そのものは、大多数の事業所で整備されてきていますが、運用に関しては十分とはいえません。十分であれば個別労働紛争がこんなにも増加することはなかったはずです。就業規則の規定は作ったが、運用が正しく行われなかった例として1つ上げます。就業規則の解雇事由に「勤務怠慢が著しく、勤務成績が極めて不良であるとき」と規定しておき、当該規定に該当した社員を解雇することは何の問題もないと思いがちですが、そう簡単にはいきません。解雇通告に至るまでの過程で適切な指導を行っていなければ、当人がおとなしく退職しない限り、不当解雇のリスクを負うことになります。

したがって、こういったリスクを回避するために、当事務所は就業規則の作成のみならず、重要規定の運用に関する指導書によりご指導いたします。先程述べたような事案が発生した時点から関係社員(この場合は当該社員の上司)が適切な行動をとれるように準備をし、また、一定の管理職については定期的に、防災訓練ではありませんが、理解度を確認するといった体制づくりを推進していきたいと考えております。

  1. 改正パートタイム労働法(H20.4.1施行)
  2. 改正労基法(H22.4.1施行)
  3. 改正育児・介護法(H22.6.30施)
  4. 懲戒解雇の取り扱い(判例から学ぶ)
 新興企業向け就業規則の整備等

                                    

1.就業規則の記載事項

表1が一般的な就業規則の記載事項ですが、この中で就業規則に必ず記載しなければならない事項があります。これを絶対的必要記載事項(労基法第89条第1項1号から3号まで)といいます。

絶対的必要記載事項

(1)始業及び終業の時刻、休憩時間(表1.34)

  休日(表1.35)

  休暇(表1.41,42)

  労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合における就業時転換に関する事項

(2)賃金(臨時の賃金等は除く)の決定・計算及び支払方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項(表1.43)

(3)退職に関する事項(解雇の事由を含む)(表1.21,24)

他の記載事項

これに対して退職手当は法律で支給が義務付けられていませんので、必ず記載する必要はありませんが、支給する場合には記載しなければなりません。これを必要記載事項といいます。任意記載事項とあるのは記載してもしなくてもどちらでも構わない事項です。

就業規則は均等待遇に反しない限り、一部の労働者についてのみ適用される別個の就業規則として作成することもできます。この場合、就業規則本則では、例えば「パートタイマーには適用しない」という適用除外規定または「パートタイマーについては別に定めるパートタイマー就業規則を適用する」 といった委任規定を設けることになります。


就業規則の記載事項一覧(表1)

  条項  章区分  コメント  記載の必要性 
1 目的 総則   必要記載事項
2 従業員の定義 総則   必要記載事項
3 適用範囲 総則   必要記載事項
4 規則の順守  総則    任意記載事項 
5 採用 人事   任意記載事項
6 労働条件明示の方法 人事   任意記載事項
7 選考時の提出書類 人事   任意記載事項
8 採用時の提出書類 人事 労基法第22条の退職時証明書を提出させることも効果的  任意記載事項
9 身元保証人 人事 正社員のみとするべき  任意記載事項
10 試用期間 人事 試用期間は3カ月~6カ月程度
試用期間における不適格要件とその運用は重要! 
必要記載事項
11 職種変更  人事異動  人事  正社員のみ適用、但し職種限定の労働契約は本人の同意が必要  必要記載事項 
12 転勤     人事異動  人事  必要記載事項 
13 出向     人事異動  人事  必要記載事項 
14 転籍     人事異動 人事 正社員のみ適用、但し本人の同意が必要  必要記載事項
15 休職 人事 年休との関係は要注意!  任意記載事項
16 休職期間  人事    任意記載事項 
17 休職中の給与  人事    任意記載事項 
18 休職期間の取り扱い  人事    任意記載事項 
19 復職  人事    任意記載事項 
20 休職後の退職  人事  トラブルが多く、適切な運用が必要  任意記載事項 
21 退職 人事   絶対的必要記載事項
22 定年 人事   必要記載事項
23 再雇用 人事 再雇用時の不適格要件とその運用が重要  必要記載事項
24 解雇 人事 整理解雇、普通解雇、懲戒解雇のどれにあたるか明確にすることと、解雇事由ごとの適切な運用が必要。  絶対的必要記載事項
25 解雇制限 人事   任意記載事項
26 解雇予告 人事   任意記載事項
27 服務 服務規律   必要記載事項
28 服務上の遵守事項  服務規律    任意記載事項 
29 セクシュアルハラスメントの禁止  服務規律    任意記載事項 
30 出退勤  服務規律  タイムカード、ICカード等のみで労働時間管理を行うことは危険 任意記載事項 
31 遅刻、早退、欠勤等  服務規律  懲戒事由との関連あり  任意記載事項 
32 個人情報保護  服務規律    任意記載事項 
33 機密保持 服務規律   任意記載事項
34 労働時間及び休憩時間 労働時間・休憩・休日   絶対的必要記載事項
35 休日 労働時間・休憩・休日   絶対的必要記載事項
36 時間外及び休日労働 労働時間・休憩・休日   絶対的必要記載事項
37 代休 労働時間・休憩・休日   必要記載事項
38 宿直及び日直 労働時間・休憩・休日   必要記載事項
39 出張・旅費 労働時間・休憩・休日   必要記載事項
40 年次有給休暇 休 暇   絶対的必要記載事項
41 育児休業等法定休暇 休 暇   絶対的必要記載事項
42 特別休暇 休 暇   任意記載事項
43 賃金 賃金 H22.4.1施行改正労基法により時間外労働手当の計算方法の変更が必要(中小は経過措置(3年程度)あり)  絶対的必要記載事項
44 安全衛生 安全衛生   任意記載事項
45 健康診断 安全衛生   任意記載事項
46 就業禁止 安全衛生   任意記載事項
47 災害補償 災害補償・教育   任意記載事項
48 教育 災害補償・教育   任意記載事項
49 表彰 表彰・懲戒   任意記載事項
50 報奨金  表彰・懲戒    任意記載事項 
51 懲戒の種類 表彰・懲戒   必要記載事項
52 懲戒の事由  表彰・懲戒  継続的に懲戒事由に該当するか判断する場合は、手順が重要  必要記載事項 
53 福利厚生 福利厚生   任意記載事項

2.就業規則の構成

一般的な就業規則の構成は図2のようになります。原則、本則は正社員に適用し、その他の雇用形態は別規則とします。安全衛生規程などは雇用形態共通で利用できるように別規程として作成し、共通で使用することとします。図2の例では安全衛生規程を作成し、雇用形態別の各規則から参照する形式としています。これによって労働安全衛生法等の改正時は安全衛生規程の改定をすればよいことになります。

パートタイマーにのみ適用する条項はパートターマー就業規則、嘱託社員にのみ適用する条項は嘱託社員就業規則で対応します。業種によっては安全衛生規程等は法令どおりであれは、別規程を用意する必要はなく、本則で法令による旨を規程しておけば足ります。

図2


3.懲戒解雇の取り扱い

事例 東亜ペイント事件(最高裁昭和61年7月14日第二小法廷判決)

(1)事実の概要

 被上告人Xは、全国15カ所に事務所・営業所を有する上告人Y会社に昭和40年に入社した後、大阪事務所に勤務していたが、昭和44年に子会社に出向させられ、昭和46年には神戸営業所に転勤させられた。Xは、昭和48年に広島営業所への転勤を内示されたが、母が高齢(71歳)であり、保母をしている妻も仕事を辞めることが難しく、子供も幼少である(2歳)という家庭の事情により転居を伴う転勤には応じられないとして、これを拒否した。Y会社はXのかわりに訴外Zを広島に転勤させ、その後任としてXに名古屋営業所への転勤を内示したが、Xが同様の理由により拒否したところ、本人の同意が得られないままに転勤が発令された。Xがこれに応じなかったところ、就業規則所定の懲戒事由に該当するとして懲戒解雇された。

(2)判決の要旨

 上告会社の労働協約及び就業規則には、上告会社は業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあり、現に上告会社では、全国に十数か所の営業所等を置き、その間において従業員、特に営業担当者の転勤を頻繁に行っており、被上告人は大学卒業資格の営業担当者として上告会社に入社したもので、両者の間で労働契約が成立した際にも勤務地を大阪に限定する旨の合意はなされなかったという前記事情の下においては、上告会社は個別的同意なしに被上告人の勤務場所を決定し、これに転勤を命じて労務の提供を求める権限を有するものというべきである。  転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することは許されないが、当該転勤命令について業務上の必要性が存しない場合、または業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというぺきである。  右の業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務能率の増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである。  本件転勤命令については、業務上の必要性が優に存在し、本件転勤がXに与える家庭生活上の不利益は、転勤に伴い通常甘受すべき程度のものであるので、本件転勤命令は権利の濫用には当たらない。

(3)判例からのポイント

  1. 就業規則に配置転換、懲戒規定があるか
  2. 就業場所が限定されていない労働契約であるか
  3. 配置転換をする業務上の必要性はあるか(上記事件の場合は転勤先の営業主任職が不在となったこと)
  4. 家庭生活上の不利益が通常甘受すべき程度であること(上記事件の場合は一家で転居となると妻は退職となる及び高齢の母がいるー>この程度なら甘受すべき)
    *その他、通勤時間が30分から1時間30分になる程度も甘受すべき程度とされている判例もあります。

*経済的あるいは家庭生活上の不利益の程度が小さくなくても、通常甘受すべき程度であれは配置転換や在籍出向、職種変更は権利の
  乱用とはほとんどならないと言えます。









深澤社会保険労務士事務所

社会保険労務士 深澤伸行

登録番号 第22070033号

会員番号 第2213089号

経営理念

成長を実感できる仕組みづくりに貢献する

行動指針

お客様のご相談には2倍3倍のパワーで応える

著作物

人事評価・処遇システム FSR人事

執筆

月刊企業実務2011.11月号

『うまく使えば効果大「職業能力評価基準」を採用・教育に役立てる』


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